貝谷久宣先生と不安・抑うつ臨床研究会が編者の本、
『パニック障害症例集』を読みました。
本書はどちらかといえば精神科医向けの症例集で、
薬物治療の記載が多い本です。
それでも、精神科医がどんな風に見立てて
どんな風に治療しているのかを学ぶことができ、参考になりました。
本書には、パニック障害が関連する12の症例が載っていて、
治療の事例+考察+討論という形になっています。
各事例の作成や討論には15名の先生方が参加されているのですが、
討論ではそれぞれ違った意見が飛び出したりして面白い。
先生によって視点が違うし、診断名が違うこともあります。
治療の事例そのものよりも、考察と討論によって
現実に展開されていることの生々しさを感じることができ、
それによって治療の事例も生命感のあるものになっている。
そんな印象を受けながら、興味深く読みました。
本書を読んで改めて思ったのですが、
同じパニック障害といえども、併発症や経過、その他の要因
(性格、気質、治療抵抗性、ストレス耐性、身体要因、外部要因……)などで、
実に様々な悩み・症状の形が出てきます。
※これは、パニック障害に限った話ではありませんが。
そして、患者さん(クライエントさん)お一人お一人に合う
治療法(進め方)も違います。
※選択できる方法は、いくつかあるにしても。
お一人お一人違うのですから、クライエントさんの話をしっかり聴いて、
何が起こっているのかをしっかり見つめて(受容と共感の姿勢で)、
合わせこむ工程(クライエントさんの確認を取りながら、
一緒に方針を決めていく工程)が必要になります。
※私はこの工程を大事にしています。
類型(分類名)や診断名にこだわるあまりに、
大事なことを見落とさないよう注意しなければと改めて思いました。
そして、安易に「この障害にはこのHow to(メソッド)」と決めてしまわずに、
あくまでお一人お一人の違いを大事にしていきたい。
不安障害の専門家であり、パニック障害の専門家として、
その点はしっかりやっていこうと考えています。
グループレッスンでも、
どうしても皆で同じワークを取り組むという形になってしまう中で、
それぞれのワークには「参加者さんの多様性」を大事にできるような
工夫を盛り込んでいます。
※これについては、どんどん進化させていきますね。
いずれにしても、お一人お一人の違い(固有の体験)を
しっかり聴いて大事にしていきたい。
そんな思いを再確認させてくれた『パニック障害症例集』。
読み応えのある本でした。
学んだことは、今後に活かしていきます。
今日も、ありがとうございます!
皆さまが、笑顔いっぱいでありますように!