吉川悟先生と東豊先生の共著の本、
『システムズアプローチによる家族療法のすすめ方』を
今読んでいます。
234ページある中の、129ページまで読み進めました。
今日は、本書の簡単な紹介とシステムズアプローチの簡単な説明、
本書記載の面接記録を読んで感じたことなどについて書いていきます。
『システムズアプローチによる家族療法のすすめ方』は、
専門性が高くて、家族に対する面接(複数の人が参加する面接)
に関して多くを学べる一冊です。
とくに、治療者H氏の面接記録(逐語記録)とその解説が、
面接6回分に渡って掲載されているところが印象的で、
私は圧倒されながら読み進めています。
(現在6回中の1回目の面接記録を読み終えたところです)
※「治療者H」という表現は、本書の表現に準じました。
どんなところに圧倒されたかについては、
下で取り上げますね。
本書では、家族内の問題に取り組みにあたって、
システムズアプローチという方法をベースとしています。
「システムズアプローチとは何ぞや?」と思われる方も多いと思いますので、
まずはそれについて書かれている部分を引用します。
システムズアプローチでは、問題とされている行動は、ある種のコミュニケーションや枠組みであると考え、「問題として語られている状況に変化を起こすこと」を目標としています。
具体的には、問題として語られている人同士の関係のあり方であったり、人同士の語り方の状況であったり、問題について語られている場面そのものを構成している文脈であったり、特定の枠組みであったり、これらはそれぞれの事例ごとに異なる扱いをするものです。
●吉川悟+東豊著『システムズアプローチによる家族療法のすすめ方』
(ミネルヴァ書房/2001/P33-34)より引用
システムズアプローチには、固定的で決定的な治療過程は存在しません。
導入の段階から個別の治療過程を創造することが基本であるため、治療過程のあり方については形式化ができないというべきかもしれません。
あえて「治療過程」と呼ぶものがあるとするならば、「情報収集→仮設設定→治療的働きかけ→再び情報収集」という治療システムでのある種の相互作用の循環かもしれません。
●吉川悟+東豊著『システムズアプローチによる家族療法のすすめ方』
(ミネルヴァ書房/2001/P36)より引用
★問題とされている行動は、
ある種のコミュニケーションや枠組みであると考えている。
★「問題として語られている状況に変化を起こすこと」を目標とする。
★各事例毎に、個別の治療過程を創造する。
★「情報収集→仮設設定→治療的働きかけ→再び情報収集」
という相互作用を循環させる。
「固定的で決定的な治療過程は存在しない」ということで、
内容を掴みにくいかもしれません。
例えば、不登校の子どものいる家庭において、
家族の話を聴きながら収集した情報を元に、
治療過程(家族で取り組んでもらう内容)を創造し、
実際に取り組んでもらう。
そして次回の面接で「やってみた結果はどうだったか?」
について聴きながら情報収集をし、
その内容(結果)を活かした形で取り組む内容を発展させていく。
その循環で、問題の解決に近づいていく。
大雑把に言うと、そのような形で進めていきます。
(大雑把過ぎて、大事な部分が抜けていると思います。ごめんなさい)
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私は本書の面接記録を読んで圧倒されましたが、
どんな部分に圧倒されたのかというと……
【面接の参加者】
かつゆき君(7歳)、父親、母親、祖父、祖母、治療者H氏
【相談内容(主訴)】
かつゆき君が学校に行けず、家庭でもいろいろなトラブルメーカーになっている。
家族のメンバー5名が参加しているわけですが、
治療者H氏は、参加者全員の話を聴きながら、
家族の中での関係性(主導権、力関係、連合関係、迎合・反発など)や
その家族の中でのパターン(ルール)を確認していきます。
このとき、家族に直接関係性について尋ねるのではなく、
話を聴いていくときに見られるそれぞれの反応の仕方から、
家族の中での関係性をキャッチしておられます。
私は治療者H氏の、的確に話を進行させながら、
関係性をしっかりキャッチしていく能力に凄さを感じました。
(質問や応答が的確であり、簡潔であり、無駄がない!
相手が5名もいるのに)
凄さを感じたのは、そこだけではありません。
例えば、同じ家族といえども、
「かつゆき君が学校に行けない理由」については、
それぞれが別の考えを持っています。
※母の考え:夫婦の問題や義母と自分との関係などの不満から
子どもにあたってしまっていたことが原因。
※父の考え:気が弱いから学校に行けない。
※祖父の考え:怠け者で根性がないから学校に行けない。
※祖母の考え:夫婦仲の悪いことや母親が仕事に出たことが原因。
皆それぞれに、言いたいことがあります。
治療者がうまく進めないと、対立が起こったり、
皆の行動がバラバラになったりしてしまいかねない状態ですが……
治療者H氏は、1人1人の話を異議も含めてきちんと聴きながら、
家族全体の考え方が意思統一されるように導いておられます。
家族全員で取り組めるようなルール(治療的取り組み)も設定しておられます。
それは、治療者が思い描く家族の理想像に準じるのではなくて、
あくまでその家族固有のパターンを考慮したものです。
意思統一やルールの設定を進めながら、
課題の主体者(この事例では父親)が誰にあるかを
さりげなく皆が認識できるように考慮もされています。
ときにはユーモアで場の緊張をほぐし、
ゲーム感覚で家族に力を合わせて取り組んでもらえるように、
工夫もされています。
家族のモチベーションが継続されるような工夫もされています。
そういった全てを決められた面接時間内にきっちり収めて
まとめておられます。
これはとても凄いこと!
この部分にも圧倒されました。
私の場合は個人セッションでは、クライエントさんは基本1名のみ。
時には2名の場合もありますが、
2名と5名では全然違います。
今の私には、ご家族5名を集めて同時に話を聴くのは
ちょっと無理があるかなと(残念ながら)感じました。
ただ順番に話を聴くだけなら取り組めるとは思いますが、
専門家として治療的に5名同時に話を聴いて(しかも考えがバラバラな5名)、
システムズアプローチを進行させて、
時間内にまとめ上げるには、かなりの熟練されたスキルが必要だと思います。
実際、治療者H氏の面接記録を読むと、
そういった熟練された凄さがビシバシと伝わってきました。
ご家族に集まっていただく形でのカウンセリングを行う予定は
今のところ私にはありませんが、
治療者H氏の面接記録から学べる部分は山のようにありました。
もちろん、不安障害の専門家として取り組む上での
ヒントもいただきました。
これからもカウンセラー&セラピストとして成長していけるよう、
研鑽して参ります。
果てしない道のりです。
今日も、ありがとうございます!
皆さまが、笑顔いっぱいでありますように!