今日は、水島広子先生の本
『対人関係療法でなおす トラウマ・PTSD』を紹介します。
トラウマを「傷」ではなくて「役割の変化」と捉えた
本書の視点についても書いていきます。
『対人関係療法でなおす トラウマ・PTSD』の内容を
大まかに紹介すると……
★トラウマ体験が原因となる
PTSD(心的外傷後ストレス障害)や
ASD(急性ストレス障害)などといった病気についての解説
※トラウマ体験が、
社会不安障害や摂食障害などの病気に
つながってしまうこともあります。
★過去のトラウマ体験によって
「対人過敏」になっている状態が、
現在の人間関係にどのような影響を与えているかについて
※事例付きです。
★「PTSDへの対人関係療法」を中心とした
回復へのプロセスについて
……など、詳しく解説されています。
一つ一つが丁寧に解説されていますので、
トラウマについての理解を深めることができます。
本書では、”トラウマとは「役割の変化」である”
という考え方が強調されています。
ここから、その考え方について書いていきます。
トラウマは「心的外傷」と訳されますし、多くの人が「傷」と認識していますが、「ついてしまった傷」というよりも、「乗り越えるのが難しい役割の変化」と考えたほうがすべきことも明らかになりますし、自分が傷物になったわけではない、ということを理解できると思います。
●水島広子著『対人関係療法でなおす トラウマ・PTSD』
(創元社/2011/P124)より引用
トラウマとは「役割の変化」。
例を挙げると、
「特に危険のことなど考えずに暮らしていた役割」
だったのが、トラウマ体験をすることによって、
「社会の危険を知りながら暮らす役割」に変化した。
そんな風に考えるということです。
なるほど、と思いました。
「傷」というよりも「役割の変化」と考えたほうが、
少しずつでも前に進んでいく力が湧いてくるような気がします。
※「傷」ついた気持ちにフタをしたり、
置き去りにするという意味ではありません。
そして……
トラウマが「永遠に残る傷」ではなく、「新たな役割への適応のプロセス」だと考えるだけでも、やるべきことが整理されてくると思います。
●水島広子著『対人関係療法でなおす トラウマ・PTSD』
(創元社/2011/P130)より引用
「新たな役割への適応のプロセス」という言葉を読んだとき、
前に進むための道が、さらにはっきり見えてくるような気がしました。
★今起こっている問題が、
病気の症状であることを認識する。
★身近な人に支えてもらう。
※身近な人との適切な(支えになる)コミュニケーションを
形成していく過程において、
対人関係療法はとても有効な療法だと思います。
★自分の感じ方を尊重し、
人との間に適切な境界線を引く。
……など、その他のアプローチを含めて、立体的に
「新たな役割への適応のプロセス」に取り組んでいく。
命に関わるトラウマ体験や、
信頼していた身近な人から受けたトラウマ体験など、
強いトラウマを持つ方にとっては
決して簡単な道ではないかもしれない……。
『対人関係療法でなおす トラウマ・PTSD』は、
そのような強いトラウマを持つ方にとっても
トラウマを紐解いて、道とヒントを示してくれる。
そんな本であるように感じました。
※トラウマ体験に悩んでおられる方には、
書籍で学ぶだけではなくて、
専門家に相談されることもお勧めします。
今日も、ありがとうございます!
皆さまが、笑顔いっぱいでありますように!