私のお気に入りの本の中に、精神科医向けの
『不安障害診療のすべて』という本があります。
この本は、医学書院から出版されている
「精神科臨床エキスパート」というシリーズの中の1冊です。
今日はこの本の簡単な紹介と、「親から学んだ社会的環境との接し方」
というテーマについて書いていきます。
『不安障害診療のすべて』には、
・強迫性障害
・心的外傷後ストレス障害(PTSD)
・パニック障害
・全般性不安障害(GAD)
・社交不安障害(SAD)
・特定の恐怖症
について、脳内でのメカニズムや症状、治療法の詳細など、
各種統計データを示しながら詳しく解説されています。
※薬物治療のフローチャート(アルゴリズム)などの記載もあり。
他の一般向け書籍やカウンセラー向けの書籍には触れられていない
データも手に入りますので、とても参考になります。
※その分、税込み6,912円と高めの値段設定になっています。
逆に、データや細かいメカニズムに興味がなくて、
「症状と治療法のみをシンプルに教えてほしい」という方には、
おすすめできない本ではあります。(詳しい分、複雑ですので)
私としましては、この本を所有して熟読することで、
不安障害の専門家としての理解を深めることができました。
専門家を名乗るからには、それ相応の知識と技術がなければならない。
そういう思いを満たしてくれる1冊だと感じています。
さて、ここから「親から学んだ社会的環境との接し方」
のテーマに入ります。
まずは、本書の社交不安障害(SAD)の章より、
社会心理学的要因について書かれているところを引用します。
社会的環境との接し方は、通常、親などを通じて学ぶことが多い。
このため、SAD患者の社会的状況に対する考え方や、不安感、恐怖感の抱き方は、部分的には親の社会的行動をモデリングすることから発達する可能性もある。
●塩入俊樹・松永寿人編『不安障害診療のすべて』
(医学書院/2013/P206)より引用
私自身の子どもの頃(中学生くらいまで)を振り返ると……
父は、「目立ちすぎると、上級生からいじめられる」
という信念を持っていたようで、私は何度もそう言われていました。
※戦争で両親を亡くした父は、
子どもの頃から苦労したのだと思います。
この信念が、子どもの頃の父を守っていたのかもしれません。
(この信念が悪いとか間違っているとかいう意味ではありません)
そして、私はいじめられないように、
上級生の前ではなるべく目立たないように
気をつけるようになりました。
「目立ったら、いじめられる」と自分に言い聞かせながら……。
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母は上手くできない私(学校のこととか兄弟げんかとか)に対して、
「お前がそんなだと、私は恥かしくておもてを歩けない」
とよく言っていました。
※私が小学生だった頃が多かったかな?
母に悪気があった訳ではないと思いますが、
羞恥心を利用して私のしつけを行おうとしていた部分がありました。
(いいとか悪いとかではなくて、
母が用いていたのはこのスタイルが多かったというだけのこと)
「上手くできないこんな僕は、母にとっては恥かしい存在」
「上手くできないこんな僕は、世間では嘲笑されるような存在」
そんな風に、私は思い込んでしまっていたかもしれません。
父から学んだ「目立ってはいけない」。
母から学んだ「上手くできない私は恥かしい存在」。
どちらも、社会不安障害(SAD)につながる
考え方・信念であると言えますね。
あくまで1つの要因であり、これが全てではありませんが、
私の社会不安障害発症に関連しているかもしれません。
※社会不安障害は克服済みです(プロフィール参照)
「世間の前では否定的な評価をされないように、上手くやらなければならない」
(そうでなければ恥かしいし、責められる)
という昔の私の信念に関連しているかもしれません。
いずれにしても、親が恐れていることは、
子どもも恐れるようになることが多い。
親が恥かしいと思っていることは、
子どもも恥かしいと思うようになることが多い。
そういうメカニズムは、あってもおかしくないと思います。
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今日は私の体験について書きましたが、
皆さまの場合(子どもの頃の体験)はいかがでしたでしょうか?
※とくに、不安障害でお悩みの方
なるべくフラットな気持ち(誰を責めるでもなく)で
過去の体験を振り返ってみると、
何らかの気づきが得られるかもしれません。
もしフラットな気持ちを保てずに、怒りなどが湧いてくる場合は、
信頼できるカウンセラーと一緒に振り返ってみることをおすすめします。
今日も、ありがとうございます!
皆さまが、笑顔いっぱいでありますように!