こころの症状はどう生まれるのか ~「裏切られた」の根底にあるもの

今日は、古宮昇先生の本、
こころの症状はどう生まれるのか』を紹介します。

 

恋人に対して「自分を満たしてほしい」という欲求の強い人が、
しばしば感じる「裏切られた」という思いの根底にあるもの
についても書いていきます。

 

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『こころの症状はどう生まれるのか』は、
私が現時点で400冊ほど持っている(どんどん増え続けています)
専門書の中でもお気に入りの一冊で、
何度も読み返している本です。

 

本書では、下記の4つの衝動に着目されています。

★自己実現を求める衝動

★無条件の愛を求める衝動

★傷つきたくない・変わりたくないと求める衝動

★自分を表現したいと求める衝動

 

それらの衝動に着目しながら
人の心のなりたちや心理療法の基本、各種症状発生のメカニズムと事例、
症状ごとの心理療法のポイントなどが
読みやすい文章で、丁寧に解説されています。

 

なお、本書で解説されている症状(病気)は、以下の通りです。

★自分が何をしたいのかが分からない・生きている実感がない

★劣等感と自己無価値感、および自己嫌悪

★完璧症

★対人恐怖・視線恐怖

★強迫性障害(およびパニック障害)

★うつ症状と双極性障害(躁うつ病)

 

『こころの症状はどう生まれるのか』を読むと
その内容が、精神分析理論と愛着理論にしっかり基づいたものであり、
(両理論とも、私は重要視しています)

それに古宮先生の貴重な体験が組み合わされて、
本当にいい本だなと感じます。

 

本書では、「転移/逆転移」についても
とり上げられています。

※「転移/逆転移」の意味についてはこちらの記事を参照

>>転移/逆転移 ~私が味わった恐怖

 

例えば、本書より一部分を引用すると

 

親から無条件に愛された、という実感が乏しく育った人ほど、そのことから来る寂しさ、恐怖、悲しさを抱えているため、周囲の人々に対して激しい転移を起こしやすい状態にあります。

激しい転移反応のもっとも分かりやすい例の一つは、恋人や配偶者の愛情と関心を求める強烈な執着と、その相手が自分の欲求を満たさないときの激しい怒り、憎しみ、攻撃です。

●古宮昇著『こころの症状はどう生まれるのか』
(岩崎学術出版社/2011/P98)より引用

 

子どもの頃に、親から無条件に愛されたという実感が
得られなかった人ほど、

周囲の人に対して、
「受け入れて欲しい」「愛して欲しい」「関心を向けて欲しい」
という欲求を、強烈な執着ともいえる感情反応とともに抱きます。

 

もちろん相手は、「全てを満たしてくれる理想的な存在」ではなく
悩みも欲求も持っている一人の人間なので、
その欲求に応え続けることはできません。

 

周囲の人に対して求め続ける人は、
相手が自分の欲求を満たしてくれない度に
「裏切られた」「傷ついた」と強く感じ、

人間に対する怒り、憎しみ、不信感を増幅させていきます。

 

相手に対して、自分の欲求を全て満たしてくれるという
非現実的な理想像を求める限り、
「どうせまた裏切られる」という恐怖も抱き続けることになります。

 

カウンセラーとしては(私としては)、
自分の欲求(カウンセリング関係の枠を超えた要求など)を
激しくぶつけてくるクライエントさんに対して
その欲求に安易に応えるということはしません。

それをしても、
クライエントさんが今まで繰り返してきた人間関係を
再現しているだけになり、援助にはなりません。

(応えきれなくなって、最終的には傷つけてしまいます)

 

あくまでカウンセリングという枠を守りながら、
クライエントさんの激しい欲求や衝動の根底にある
感情に寄り添うことを目指します。

(欲求に応じるということではなくて)

 

これができるかどうかは、
カウンセラー自身の心の在りよう(未解決の問題含む)が
大きく関わってきます。

私が自分自身と向き合うことを大事にしている
理由の一つでもあります。

 

感動転移や行動化が激しいクライエントさんに対して
どこまでの範囲なら自分が引き受けられるかということを
明確にしておくも、大事なことだと思っています。

安易に引き受けてしまったことが原因で、
クライエントさんをより傷つけてしまうことがあるからです。

 

まだまだ……きっと一生……

私の修業は続きます。

心理臨床の世界は、どこまでも深い世界です。

とことん学び続けるしかありません。

 

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今日も、ありがとうございます!

皆さまが、笑顔いっぱいでありますように!