かくれ躁うつ病~境界性パーソナリティ障害と重なる症状の出る原因

『かくれ躁うつ病が増えている』
という本を読みました。

岩橋和彦先生、榎本稔先生、深間内文彦先生の
共著の本です。

 

今日は本書の簡単な紹介と、
「不安定ですぐキレる」などの境界性パーソナリティ障害と重なる症状が
双極性障害に現れる原因(の1つ)について書いていきます。

 

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ちなみに「かくれ躁うつ病」とは、
双極性障害(躁うつ病)の診断の難しさを表している表現です。

 

・長期的に経過をみないと「うつ病」と区別しにくい。

(どうしても、うつ状態ばかりがクローズアップされがちになる)

・患者さんに「自分は躁状態(病気の症状)である」
という自覚のない場合が多く、診断する精神科医に伝わらない。

 

そういった理由で、本当は双極性障害なのに、
うつ病と診断されているケースのことを、
本書では「かくれ躁うつ病」と表現しています。

 

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ここで『かくれ躁うつ病が増えている』の内容を簡単に紹介します。

 

★双極性障害に関する診断、病前性格、薬物療法の詳細、
職場復帰プログラムについてなど

★うつ病、新型うつ病、境界性パーソナリティ障害、各種依存症、発達障害など
双極性障害と部分的に類似した症状の見られる病気について

 

上記のように、1冊に幅広い内容が詰め込まれています。

薬の認可の記述の中には古いものもありますが、
薬の使い分け(処方)の解説などは充実している方だと思います。

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双極性障害でも
「不安定な気分からリストカットする」
「些細なことでキレる」
などの境界性パーソナリティ障害と重なる症状が現れることがあります。

なぜそういった症状が出るのかについて
書かれている部分を、ここで引用します。

 

「躁うつ病の患者さんでは、不安症状に対する抗不安薬は、あくまで期間限定か頓服で使うならいいが、1年以上抗不安薬を使って量や種類が増えていくと、躁うつの波が余計に大きくなったり(不機嫌な高揚感)、躁とうつが入り乱れる混合状態になり、気分がますます不安定になる。

その結果、易怒性や衝動性が増し、リストカットや食べ吐きが止まらなくなる。

これが人格障害によく似た症状に見える」ということです。

●岩橋和彦、榎本稔、深間内文彦共著『かくれ躁うつ病が増えている』
(法研/2010/P77-78)より引用

 

最も使われているベンゾジアゼピン系の抗不安薬は依存性が高いので、
患者さんからは
「もっと薬を増やしてください。多めに持っていないと不安です」
という訴えが出るとのこと。

その声にそのまま応えると、患者さんの症状はより強くなっていきます。

 

本書には双極性障害の不安症状には、
「抗精神病薬を用いる方が適切と考えられる」と書かれています。

(種類や量を少なくする方向で)

 

双極性障害の場合は、「適切な薬を適切な量服用する」
という薬物療法の基本がより重要であるということが改めて復習できました。

 

このあたりの話、
「カウンセラーが薬を処方するわけではないので知らなくてよい」
とするのではなく、
「クライエントさんの症状は病気の症状なのか?それとも薬による症状なのか?」
という観点も持ちながら、あらゆる仮説を立てつつお話を聴いていきたい。

そんな風に私は考えています。

 

※不安障害専門カウンセラーなのに、精神疾患全域に渡って勉強をしているのは、
そういう理由(あらゆる仮説を立てるため)もあるからです。

(もちろん、それだけではないですが)

 

学ぶべきことは山ほどありますが、
これからもしっかり学び続けていこうと思います。

 

双極性障害で抗不安薬を服用されている方。

もし「不安定でキレやすい」症状が強く出てきているとしたら、
それは薬による症状なのかもしれません。

一度かかりつけの精神科医に相談してみることをおすすめします。

(薬を変えることで、症状が改善される可能性があります)

 


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今日も、ありがとうございます!

皆さまが、笑顔いっぱいでありますように!