今日は、緩和ケア医の大津秀一先生の本
『1000人の患者を看取った医師が実践している 傾聴力』
を紹介します。
本書より「人の存在を支える3つの柱」というテーマも
取り上げながら書いていきます。
『1000人の患者を看取った医師が実践している 傾聴力』は、
緩和ケアの現場で実践されている傾聴について
深く学べる本です。
「聴く」ことそのものの重要性や技法などは
通常のカウンセリングとほぼ共通ですが、
もうすぐ死を迎えておられる人にどのように関わっていくかという
通常とは異なる切り口から本書は書かれています。
一つ一つの解説は、丁寧で深いです。
死を前にして、
「私は何のために生きているのだろうか」
「自分の人生には、どんな価値があったのだろうか」
……と苦悩している患者さんが
人生に新しい意味を見い出せるように、支援していく……。
(強引に導くという意味ではなくて)
緩和ケアの重要性が、
ひしひしと伝わってくる本でした。
ここで本書より、「人の存在を支える3つの柱」について
説明されているところを引用します。
人の存在を支えている要素として3本の柱があります。
時間存在は、「将来や未来」を意味します。
それが人の存在を支えます。関係存在は、「他者とのつながり」を意味します。
それが人の存在を支えます。自律存在は、「自らのことを自らが決めること」を意味します。
それが人の存在を支えます。
●大津秀一著『1000人の患者を看取った医師が実践している 傾聴力』
(大和書房/2013/P42)より引用
終末期になると、残り時間の少なさを自覚し、
時間存在という柱が弱くなります。
同時に、体の自由も利かなくなり、
自律存在という柱も弱くなります。
そして、周囲の人との気持ちのすれ違いなどから孤独感が強くなり、
関係存在という柱も弱くなっていきやすいのですが……
周囲の人間(医療者やご家族など)が
当人の話をしっかり「聴く」ことによって
つながりの力(関係存在)を強化し、
時間存在・自律存在の弱った分を補完することができるということ。
時間存在・自律存在が弱っていく中で感じる
寄り添ってくれる周囲とのつながり(関係存在)は、
言葉では表現できないほど
ありがたいものなんだろうなって思います。
自分はそのときになったら、
どんな風に感じるのかな。
きっと、やっぱり、
「ありがとう」の気持ちで
いっぱいになると思います。
時間存在・関係存在・自律存在の考え方については
すごく分かりやすくて、
頭の中で整理しやすい考え方(指針)だと思いました。
なお、関係存在だけではなくて、
時間存在、あるいは自律存在が強化されることにより
その他の柱の弱った分を補完するケースもあるそうです。
(新しい意味を見い出すことによって強化)
この3つの柱の考え方は、緩和ケアの場面だけではなくて
通常のカウンセリングや、日常の人間関係においても
活用できますね。
また、自分の心が揺らいでいるときに、
3つの柱のうちのどの柱が揺らいでいるのだろうと
考えてみたり感じてみたりすることで
見えてくるものもあるかと思います。
私自身は、人生の折り返し地点を過ぎて、
「残された時間」というものを意識しつつ
目標に向かって進んでいるところです。
弱くなり始めた時間存在を、
自律存在を強化することで補完している感じでしょうか。
関係存在も、マイペースで、自分らしくいられる形で
強化していきたいと思っています。
今日も、ありがとうございます!
皆さまが、笑顔いっぱいでありますように!