今日は、林公一先生の本、
『統合失調症 患者・家族を支えた実例集』
の紹介と、読んだ感想などを書いていきます。
統合失調症の病識の問題と
カウンセラーとして気をつけたい点なども書いていこうと思います。
『統合失調症 患者・家族を支えた実例集』は、
一般の方向けに書かれた統合失調症の症例集です。
29もの症例が掲載されており、
その一つ一つに詳しい解説が載せられています。
読みやすくて、かつ、内容が深いので
患者さんの身近におられるご家族・ご友人などが
病気への理解を深めるのに役立ちますし、
カウンセラーの勉強用としても、優れた本だと思います。
ここから実践的な話に入ります。
統合失調症の可能性が高いと見立てられる
クライエントさんの場合でも、
もちろん、寄り添うことを心がけながら話は聴いていきます。
ただし、気をつけなければいけないことがあります。
それは、統合失調症の場合、(基本的には)
薬による治療を受けなければ、よくならないということです。
例えば、毎週1回のカウンセリングを続けている間にも
病気は進行していきます。
だから、もしそのクライエントさんが
薬による治療を受けておられない場合は、
カウンセラーとしては、クライエントさんの話を聴くだけでなく、
精神科で診察なり治療なりを受けていただくように
働きかけることも必要です。
(クライエントさんにとっては、治療を受ける貴重なチャンスです)
(必要な時に、適切なリファーを行うことを、私は大事にしていきます)
※リファー:他の専門家に紹介・依頼すること。
そのとき、忘れてはいけないのが、この点です。
統合失調症では、治療をしない限り、病識はないのが普通です。
そして薬による治療を受ければ、徐々に病識が出てきます(ひとつ前のケース⑭がその例です)。
そして完全に自分の病気が認識できる段階に達することもあれば、いつまでも部分的にしか認識できないこともあります。
よく効く薬があるのにもかかわらず、統合失調症の中には適切な治療を受けていない方がまだまだ多いのは、この病識の問題がとても大きいのです。
●林公一著『統合失調症 患者・家族を支えた実例集』
(保健同人社/2007/P116-117)より引用
※引用文の()内は、気にしないでください。
※病識:自分が病気であるという自覚
クライエントさんにとっては、
被害妄想や幻聴は、リアルに起こっている出来事です。
それが病気の症状からくるものだとは、
捉えておられないことがほとんどです。
だから、「あなたは病気だから、精神科に行かれたほうがいいですよ」
と、カウンセラーが言っても、
クライエントさんの反感を買ったり、傷つけてしまったりするだけに
なってしまう可能性が大だと思います。
それでは、どうしたらいいのかというと……
クライエントさんが、現在持っておられる悩み
(「○○に狙われている」、「○○に24時間監視されている」など)
から回避する手段として、病院を勧めるというのも
一つの方法だと思います。
(そう簡単にはいかないケースも多いと知りつつ書いています……)
こちらからの提案を、クライエントさんに受け入れてもらうためにも、
大切なのは、クライエントさんとの信頼関係。
それを築き上げるためにも、やはり「聴く」ということを
大事にしていきたいですね。
クライエントさんは、お一人お一人違いますし、
カウンセリングの内容や展開も毎回違います。
そんな中で、
「クライエントさんの役に立つためには、どうしたらいいのか?」
と自分に問いかけ続ける姿勢は、忘れないでいようと思います。
今日も、ありがとうございます!
皆さまが、笑顔いっぱいでありますように!