対人恐怖の治し方 ~赤ペン先生の「あるがまま」の教え

今日は、森田療法の創始者である森田正馬先生の本、
『対人恐怖の治し方』を紹介します。

 

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この本は、1953年に刊行された
『赤面恐怖の治し方』が新装改題されたものです。

今が2015年ですので、
62年前に初めて刊行されたということになります。

 

62年前に、すでにこのような治療方法が
日本で確立されていたということに私は感動を覚えます。

考え方が全然古くなくて、今でも通用する本質的なものばかりなので
本当に「スゴイ!」って思います。

 

この本に登場する患者さんたちの悩みは、
今不安障害で悩んでおられる患者さんたちと基本的には同様です。

その悩みの過程と克服の過程、
そして支援者側の立場を経験してきた私にとっては、
時代を超えて共感できるような内容ばかりでした。

 

世の中の状況が大きく変わっても、
悩みの内容としては本質的にはほとんど変わっていないものがある。

そんなことも再確認させてくれる本でした。

 

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『対人恐怖の治し方』には、森田先生の治療の事例が
いくつか記載されています。

赤面恐怖、対人恐怖、治療困難な対人恐怖、
女性恐怖、自己臭恐怖、神様に対する強迫観念など、
比較的よく見られる症例(なので参考になる)が載せられています。

 

森田先生の療法(森田療法)では、
基本的には入院治療が行われていました。

患者さんは入院中や退院後も毎日日記をつけます。

 

その日記を森田先生が読まれて、
ところどころに朱書きを加えられる。

まるで赤ペン先生のようですね。

その朱書きの内容には、
対人恐怖を治す秘訣が散りばめられています。

 

例えば、こんな風に……

 

自分は、どんな些細なことでも、自発的にする場合には、人に対して気兼ねを感じないことはない。

たとえば、盥(たらい)を上向きに置いて、底に水の溜まっている時、これをちょっと下向きにしたいと思っても、人から「利いたふうのことをする」と思われはしないかと思って、人の見ている時には、なかなか手が出せない。

 

[自ら、自己中心的なもの、外見坊(みえぼう)、ヒネクレ者、自ら欺くもの等と自覚し、これを欺かず弁護せず、そのままに覚悟した時は、こんな取越苦労は、起こるはずがないのである。

これを人前で隠し立てしようとするから、いつまでも、苦労が絶えないのである。]

※[ ]内が、森田先生による朱書き

●森田正馬著『対人恐怖の治し方』(白揚社/2011/P161)より引用

 

自己中心的、外見坊、ヒネクレ者……。

なかなかストレートな言葉を使われる先生ですが、
ストレートな言葉の中に、患者さんへの深い関心と
愛が詰まっているように感じられます。

なので、患者さんも素直に聞き入れ、
自分の洞察につなげていきます。

 

そして、日々の行動に学びや洞察で得たことを活かし、
挑戦し、そしてまた気づき、それらを重ねながら
患者さんは自分を苦しめてきた悪循環の中から
いつしか抜け出していきます。

 

引用文の森田先生の言葉にある
「自覚し、これを欺かず弁護せず、そのままに覚悟」
という部分は、「あるがまま」の考え方を示していますね。

 

「震えるのが怖いなら、やらなくてよい(逃げたままでよい)」
というのが「あるがまま」の教えではなくて、

「震えるのが怖いなら、震えながら、怖がりながら、やりなさい」
というのが「あるがまま」の教えです。

※あくまで対人恐怖・赤面恐怖(社会不安障害)などの場合です。

 

これは、行動療法のエクスポージャー(暴露)にも見られる考え方ですし、
私自身もSAD克服の過程では、震えながらもたくさん行動しました。

(行動した後は、自分のことを褒める!褒める!褒める!)

 

今お悩みの方にとっては厳しそうに思える考え方かもしれませんが、
そのような方法を推奨しながら
森田先生は患者さんにしっかり関心を寄せてフォローしておられます。

なので、患者さんにとっては心強かったはずだと思います。

※日記でのやりとりに、自分を見守ってくれているような
「安全基地」としての役割りもあったのだと思われます。

 

その辺りの姿勢をしっかり見習いつつ、
私も支援者としてクライエントさんをサポートしていこうと
改めて思いました。

 

『対人恐怖の治し方』

多少古風な味わい深い文体の中に
時代を超えた本物の学びを得ることのできる本です。

 

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今日も、ありがとうございます!

皆さまが、笑顔いっぱいでありますように!