あがらずに話せるようになる本~学習理論とあがり症

新田祥子先生の本、
『心臓がドキドキせず あがらずに話せるようになる本』
を読みました。

 

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「ドキドキせず あがらずに話せるようになる」

不安障害の方にとって、
とても魅力的なタイトルだと思います。

 

本書では、あがり症の、
「学習によって身につけられた条件反射が原因」(P36)
という面に着目し、
新たな学習(安心感で満たしながら話す)をすることによって、
あがり症の克服を狙っています。

 

これは、行動療法の学習理論
(人間の反応や行動は、後天的な学習によって獲得される)
に基づいた方法で、とくに珍しい方法ではありません。

不安場面に段階的に挑んでいく「段階的曝露」や、
不安場面にて筋弛緩法(ぎゅっと力を入れた後、脱力する)などの
脱感作を行う「系統的脱感作」なども、この理論に基づいており、
私も基本的なアプローチの一つとして取り入れています。

 

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本書では、万人に向けてザックリ書かれているということもあるからか、
比較的軽度のあがり症の方で、
「本を読んで得たヒントを、実際に行動に移し、
トライ&エラーをしながら自分の症状に適した方法に合わせ込んでいく」
ということのできる方には、いいヒントがもらえる本だと思いました。

ただ、そのためには、実行力や継続力、自己観察力、応用力などが必要で、
誰もが一人で実践できる内容ではないように感じました。

 

おそらく、本書を読んで、「それができないから困っている」と
感じられた方も多いのではないでしょうか。

そういった意味では、
「予期不安」や「回避」などがそれほど伴わないレベルの、
「不安障害」とまではいかない「あがり症」の方に、
おすすめしたいと思いました。

 

「予期不安」や「回避」が伴う「不安障害」の臨床的アプローチとしては、
もう少し、きめ細かくて深いアプローチが必要ではと、
個人的には思いました。

(おそらく、そこまでを対象とされていないと思いますので、
これはこれでありなのだと思います)

 

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さて、『心臓がドキドキせず あがらずに話せるようになる本』に、
「私も同感です!」と感じた記述がありました。

 

人前でのスピーチが苦手な人や、人と話すことが苦手という人には、どちらかというと引っ込み思案で恥ずかしがり屋、ものごとに慎重で控えめな人が多いようです。

じつはこのようなタイプの人は、客観的に見たらとてもステキで好印象です。

●新田祥子著『もうだいじょうぶ! 心臓がドキドキせず
あがらずに話せるようになる本』(明日香出版社/2014/P93)より引用

 

「客観的に見たらとてもステキで好印象です」

たとえ話が上手ではなかったとしても、
その人が一生懸命に伝えようとしてくれたなら、
「ステキだな」って私は思います。

 

恥ずかしさや不安、緊張、怖さなどを感じておられながらも、
一生懸命伝えようとしてくださる姿勢には、
本当に心を打たれます。

大げさに聞こえるかもしれませんが、
内面と外面からの両方より伝わってくるものに対して、
「美しさ」すら感じることも、よくあります。

 

ただし、あがり症で悩んでおられるご本人は、
「上手く話せていない自分」や、
「馬鹿にされたらどうしよう」などといった不安に、
心の焦点を合わせてしまいがちです。

 

これは、大変もったいないことですので……

ご本人にとって、ちょうどいいタイミングで、
「ご自分の持つ魅力」についても気づいていただけたらと思います。

(ご自分で思っておられる以上に、皆さん魅力的ですよ!)

 

「話が上手かどうか」が、人の価値を決めるわけではありません。

「話が上手かどうか」は、人が持つ数々の特性(個性)の中の、
ほんの1つのパートです。

 

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●不安障害 克服へのプロセス

不安障害(社会不安障害、パニック障害等)を克服するプロセスは、
上がったり下がったりを繰り返しながらも、
全体的には克服に一歩一歩近づいていくようなイメージです。

一時的に落ち込んだり、逆戻りしたと感じるようなことがあったとしても、
前を向いて取り組んだことは、必ずプラスとして蓄積されています。

ほんの小さなことでも構いませんので、
不安障害の克服につながる「できること」を積み重ねていきましょう。

そして、取り組んだ後は、
「よく頑張ったね」と自分のことを褒めてあげてくださいね。

「何を」「どのように」取り組めばいいのか分からない方、
もっと自分に合わせた方法を知りたい方、
専門家に相談しながら無理なく効果的に取り組みたい方は、
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今日も、ありがとうございます!

皆さまが、笑顔いっぱいでありますように!